現時点で、社会保険・労働保険の電子申請が義務化されているのは「資本金1億円を超える特定の法人」などです。従業員1〜30名規模の小規模法人は義務化の対象外であり、今まで通り「紙」での提出や郵送を続けても罰則や不利益は一切ありません。
ただし、手続きの時短や正確性を考えると、GビズIDを取得しての電子申請化は強くおすすめします。
こんにちは。アプト社会保険労務士事務所の氏家です。
「大企業は電子申請が義務になったと聞いたけど、うちのような小さな会社もe-Govを使わないとダメなの?」
顧問先の社長さんや総務担当の方から、本当によくいただくご相談です。国がデジタル化を進めていると聞くと、対応が遅れているんじゃないかと焦りますよね。
結論から言うと、小規模法人はまだ無理に電子化しなくても大丈夫です。今日は、電子申請の「義務化の範囲」と、無理なく移行するためのステップをお話ししますね。
今、電子申請が「義務」なのはどんな会社?
資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人などが対象です。小規模法人は対象外です。
社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(雇用保険・労災保険)の手続きにおいて、国は電子申請(e-Gov等)の利用を推進しています。しかし、すべての会社に一律で義務を課しているわけではありません。
現在、義務化の対象となっているのは「資本金が1億円を超える特定の法人」や「相互会社」「投資法人」といった、比較的規模の大きな組織です。ですので、従業員数名〜数十名で経営されている一般的な中小企業・小規模法人の場合、この義務化要件には当てはまらないことがほとんどなんです。「うちの会社は資本金1億円もないよ」という社長さん、まずはご安心くださいね。
従業員30名以下の小規模法人は紙でもいいの?
はい、今まで通り「紙」の書類を年金事務所やハローワークの窓口に持ち込んだり、郵送したりしても全く問題ありません。
義務化の対象でない法人が、紙で算定基礎届や月額変更届、雇用保険の資格取得届などを提出したからといって、窓口で受け取りを拒否されることはありません。もちろん、罰則やペナルティ、助成金が不利になるようなこともありません。
「システムの設定が苦手で、手書きのほうが確実なんです」というご相談を受けることも多いです。無理に慣れないシステムを導入してミスをしてしまうよりは、正確に手続きできる方法を選ぶことも大切です。紙には紙の確実さがありますからね。
紙での手続きは問題ありませんが、最近は役所から送られてくる用紙が減っていたり、専用の複写式用紙を自分で窓口に取りに行かなければならないケースも増えています。用紙の準備には少し余裕を持ってくださいね。
義務じゃないのに電子申請(e-Gov)にするメリットは?
最大のメリットは「移動・待ち時間ゼロ」「24時間提出可能」「公文書(控え)のデータ管理」の3つです。業務効率が劇的に変わります。
義務ではないとお伝えしましたが、それでも私たちが電子申請をおすすめするのには理由があります。それは、圧倒的に「ラク」だからです。
- 役所に行く移動時間と待ち時間がゼロになる
- 平日の日中だけでなく、夜間や休日でもデータを送信しておける
- 手続き完了後の「控え(公文書)」がデジタルデータで届くので、ファイリングの手間が省ける
とくに、ハローワークで従業員さんの離職票を作るときなど、月末・月初は窓口が非常に混雑しますよね。電子申請なら、会社のデスクに座ったまま数クリックで完了します。「一度電子申請を覚えたら、もう紙の手続きには戻れない」とおっしゃる担当者さんがほとんどなんです。
何から始める?最初のステップは「GビズID」
まずは国の共通認証システムである「GビズIDプライム」のアカウントを取得しましょう。これが電子申請の第一歩になります。
「よし、電子申請をやってみよう」と思ったら、最初にやるべきことは専用のIDを作ることです。e-Gov(イーガブ)という国の電子申請窓口を利用するためには、法人の代表者として「GビズIDプライム」というアカウントを取得する必要があります。
GビズIDプライムの取得は無料ですが、オンラインで情報を入力したあと、申請書を印刷し、法人の実印を押して、印鑑証明書を添えて郵送する手続きが必要です。審査に数週間かかることもあるので、余裕のある時期に取得しておくことをおすすめします。
最近のクラウド給与計算ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を使っている会社さんなら、このGビズIDを使ってソフト内から直接API連携で申請できる機能もついています。これが一番カンタンな方法ですね。
社労士に手続きを任せる場合も何か必要?
社会保険の手続き自体は、会社がGビズIDを持っていなくても社労士のIDで代行可能です。ただ、助成金申請などで自社のIDが必要になる場面は増えています。
顧問社労士に手続きを丸投げしている会社さんの場合、「社労士が電子申請をしてくれるなら、うちは何もしなくていいの?」と疑問に思いますよね。
社会保険や雇用保険の入退社手続きについては、社労士が自身の専用IDを使って代理送信できるため、会社側でGビズIDを取得しなくても問題なく電子化が完了します。
ただ、最近は各種の助成金・補助金の申請で「自社のGビズIDプライムアカウント」が必須要件になることが増えています。将来的な備えとして、IDだけは取っておいて損はありませんよ。
今の会社の状況を整理して、無理なくデジタル化に向けた準備を進めましょう。
- 自社の資本金を確認し、電子申請の義務化対象(1億円超など)でないかチェックする
- 現在、年金事務所やハローワークへの往復・待ち時間にどれくらい時間をかけているか振り返る
- 将来の助成金申請や手続き効率化に備え、「GビズIDプライム」の公式サイトを確認する
- 現在使っている給与計算システムが、電子申請(API連携)に対応しているか調べる
- 自社での対応が負担だと感じたら、電子申請に対応している社労士にアウトソーシングを検討する
よくある質問
GビズIDの取得にお金はかかりますか?
アカウントの作成・維持費用は無料です。ただし、登録の際に法人の印鑑証明書(発行から3か月以内の原本)を郵送する必要があるため、その取得費用(数百円)と郵送代のみ会社の負担となります。
クラウド給与ソフトから直接申請できますか?
はい、e-GovのAPI連携に対応している給与計算ソフトや労務管理ソフトであれば、ソフトの画面上から直接データを送信できます。e-Govのサイトにログインし直す手間が省けるため、非常に便利です。
電子申請に切り替えたら、紙の控えはどうなりますか?
手続きが完了すると、行政機関から電子署名が付与された「公文書(PDFなどのデジタルデータ)」が発行されます。これが正式な控えとして法的な効力を持ちますので、自社のパソコンやクラウド上に保存して保管してください。
離職票も電子申請できますか?
可能です。ハローワークに足を運ぶ必要がなく、処理が完了すれば電子公文書として離職票が発行されます。従業員さんにもPDFデータで渡したり、会社で印刷して郵送したりできるため、発行スピードが格段に上がります。
まとめ:電子化は義務ではないけれど、会社の時間を作る味方です
小規模法人は「紙」のままでも大丈夫ですが、移動や待ち時間を削減できる電子申請は大きな味方になります。
「周りがどんどんデジタル化していくから、うちも急がなきゃ」と焦る必要はありません。まずはGビズIDの取得から、一つずつで大丈夫です。時間のかかる書類仕事がパソコン一つで終わるようになると、社長さんや担当者さんが本来やるべき仕事にしっかり時間を使えるようになりますよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「電子申請に切り替えたいけど設定する時間がない」
手続きにお困りなら、決して社長おひとりで抱え込まずにご相談ください。私たちアプト社会保険労務士事務所が、GビズIDの取得サポートから、クラウドソフトの導入支援、日々の手続きの完全アウトソーシングまで、御社の状況に合わせた一番負担の少ない方法をご提案します。
出典・参考(一次情報): 厚生年金保険法(e-Gov法令検索)
※本記事は2026年9月26日時点の法令・公表情報に基づいています。個別の判断は専門家にご確認ください。

