小規模法人の育休手続きガイド|社会保険料免除と会社が押さえる要件

こんにちは。アプト社会保険労務士事務所の氏家です。

少人数の会社を経営されている社長様や人事担当者様から、「従業員から育児休業を取りたいと相談されたけれど、何から手続きをすればいいですか?」「育休中の社会保険料はどうなるのでしょうか?」といったご相談をよくいただきます。
普段専任の担当者がいない小規模な企業様ですと、初めての育休対応に不安を感じることも多いですよね。でも、基本の流れとルールを整理しておけば慌てる必要はありません。今回は、会社側が必ず行うべき手続きと、社会保険料免除の仕組みについて分かりやすく解説しますね。

この記事のポイント(要点整理)

  • 従業員から育休の申出を受けたら、原則として会社は書面等で取扱通知を交付し、年金事務所やハローワークへ順次手続きを行います。
  • 育児休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は、手続きを行うことで本人負担・会社負担の双方が免除されます。
  • 月途中での取得や短期育休(産後パパ育休など)の場合、月末時点で休業しているか、または同一月内に14日以上休業しているかが免除の判定要件です。

目次

育児休業の申出を受けたら会社が最初に行うこと

従業員から育児休業の申出を受けた場合、会社はまず休業期間などを明記した「育児休業取扱通知書」を従業員へ交付し、社内体制と手続きの準備を整えます。

従業員から「子どもが生まれるので育児休業を取得したい」と伝えられたら、まずは口頭だけでなく書面や電磁的方法による申出を受け付けます。原則として休業開始予定日の1か月前(産後パパ育休の場合は原則2週間前)までに申出を行うことが法律で定められています。

申出を受け取った後、会社側は対象となる従業員に対して「育児休業取扱通知書」を速やかに交付しましょう。この通知書には、休業開始日と終了予定日、休業期間中の賃金の取り扱い(一般的には無給とするケースが多いです)、復職後の労働条件などを記載します。

小規模な職場では、1人が抜けるだけでも現場の業務調整が大変ですよね。休業に入る前に業務の引き継ぎスケジュールを立て、周囲のスタッフにも早めに協力を促す配慮をしておくとスムーズですよ。

育児休業中の社会保険料免除の仕組みと要件

育児休業期間中は、年金事務所等へ申出書を提出することで、休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。

休業期間中、会社から給与が支払われない場合でも、社会保険料の支払いが免除されるため、従業員側の金銭的負担は大幅に軽減されます。また、会社にとっても法定福利費の負担がなくなるメリットがあります。なお、免除された期間は将来の年金額計算において「保険料を納めた期間」として扱われますのでご安心ください。

月給にかかる保険料免除の要件は、以下のいずれかを満たす場合です。

  • その月の末日時点で育児休業を取得している場合
  • 同一月内に育児休業を開始・終了し、その休業日数が14日以上ある場合

以前は「月末時点で休業していること」のみが要件でしたが、短期間の育休を取得する男性従業員が増えたことを背景に法改正が行われ、14日以上の取得でも対象月が免除される仕組みになりました。

休業のパターン月末の休業状態同月内の休業日数社会保険料の免除
月をまたぐ長期休業月末時点で休業中問わない対象月すべて免除
月途中に開始し月末復職月末は就労中14日以上その月は免除
月途中に開始し月末復職月末は就労中14日未満免除されない

実務で知っておきたい賞与保険料免除の注意点

賞与にかかる社会保険料が免除されるためには、賞与月の末日を含めて連続して1か月を超える育児休業を取得している必要があります。

賞与(ボーナス)に対する社会保険料免除は、毎月の給与のルールとは異なりますので注意が必要です。以前は月末の1日だけ育休を取って高額な賞与保険料の免除を受ける事例が見られましたが、公平性の観点から現在は要件が厳格化されています。

具体的には、賞与が支払われた月の末日を含んで、連続して1か月を超える育児休業を取得している場合のみ免除されます。例えば、賞与月に数日間だけ育休を取得したというケースでは、毎月の給与保険料は免除要件を満たせば免除されますが、賞与の保険料は免除の対象外となります。従業員の方から「ボーナスの保険料も免除になりますか?」と聞かれた際には、この期間要件をしっかり確認してお伝えしてくださいね。

育休手続き全体のスケジュールと流れ

育休手続きは、「年金事務所への免除申請」と「ハローワークへの育児休業給付金申請」の2系統を計画的に進めることが大切です。

手続きの抜け漏れを防ぐために、時系列で実務の流れを確認しておきましょう。

  1. 休業開始前:従業員から育児休業申出書を受理し、「育児休業取扱通知書」を交付する。
  2. 休業開始直後:日本年金機構(年金事務所)へ「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を提出する(事業主経由で申請します)。
  3. 休業開始から約2か月後:ハローワークへ「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」および「育児休業給付金支給申請書」を提出する。
  4. 復職時:予定通りの終了であれば終了届の提出は原則不要ですが、予定より早く復帰した場合などは「育児休業等取得者終了届」を提出する。

なお、定時決定(算定基礎届)などの社会保険手続きとの兼ね合いについては、定時決定のスケジュールと実務解説も合わせてご参照ください。また、育休復職後に時短勤務等で給与が下がった場合には、養育期間標準報酬月額特例の届出を行うことで、将来の年金額が下がらないよう保護する手続きも用意されています。

手続きの期日に遅れてしまうと、従業員への給付金の支払いが遅れる原因にもなりますので、社内スケジュールをカレンダー等で共有しておくのがおすすめです。なお、関係法令に違反した場合には行政指導の対象となり、罰則の定めもありますので、適正な手続きを心がけましょう。

よくある質問(FAQ)

育休中に従業員へ給与を支払わない場合でも社会保険料は発生しますか?

年金事務所へ育児休業等取得者申出書を提出することで、休業期間中の健康保険・厚生年金保険料は本人負担・会社負担ともに免除されます。

男性従業員が1週間だけ育休を取得した場合、その月の社会保険料は免除されますか?

月末時点で休業中でない場合、同月内の休業日数が14日未満であれば、その月の給与にかかる社会保険料は免除されません。

社会保険料が免除されている期間は、将来受け取る年金額に影響しますか?

免除期間中も保険料を納付したものとみなして計算されるため、将来受け取る厚生年金の給付額が減額されることはありません。

育児休業給付金の手続きは会社と従業員のどちらが行う必要がありますか?

育児休業給付金の手続きは、原則として事業主(会社)が管轄のハローワークへ賃金台帳や出勤簿等の必要書類を添えて申請します。

監修:社会保険労務士 氏家(アプト社会保険労務士事務所)

従業員の育児休業取得は、会社の制度や体制を見直すよい機会でもあります。制度の変更点や具体的な書類作成などで迷われた際は、抱え込まずにいつでもご相談くださいね。従業員にとっても会社にとっても安心して働ける職場づくりを応援しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

出典・参考情報:

  • 厚生労働省:育児休業給付について(https://www.mhlw.go.jp/)
  • 日本年金機構:育児休業等期間中の社会保険料免除(https://www.nenkin.go.jp/)
  • e-Gov法令検索:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(https://laws.e-gov.go.jp/)

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