従業員1〜30名の法人向け

昇給したのに、保険料はいつ変わるの?「随時改定」のやさしい判定方法

月額変更届が必要になる3つの条件を、給与担当じゃなくても分かるように

MONTHLY CHANGE NOTIFICATION

随時改定とは、昇給・降給など固定的賃金の変動があったとき、年1回の定時決定を待たずに社会保険料の基礎(標準報酬月額)を見直す手続きです。①固定的賃金の変動、②変動月から3か月の支払基礎日数が各17日以上、③3か月平均で従来と2等級以上の差、の3つをすべて満たしたら「月額変更届」を提出し、変動月から4か月目の保険料から変わります。

こんにちは。アプト社会保険労務士事務所の社会保険労務士、氏家です。
「お給料を上げたのに、社会保険料っていつ変わるんですか?」——顧問先の社長さんから、本当によくいただくご質問です。答えは「すぐには変わらない。でも、変わるタイミングは決まっている」。この仕組みが随時改定です。今日は、3つの条件を順番に見ていきますね。

随時改定とは?定時決定と何が違う?

定時決定が全員一律・年1回の見直しなのに対し、随時改定は給与が大きく変わった人だけを対象に、年の途中で標準報酬月額を見直す仕組みです。

社会保険料のもとになる「標準報酬月額」は、毎年の定時決定で年1回見直されて、原則そのまま翌年8月分まで使われます。

でも、年の途中で昇給や降給があったら? 実際のお給料と保険料の基礎が、ずれたままになってしまいますよね。このずれを直すのが随時改定で、そのときに出す書類が「被保険者報酬月額変更届」——通称月額変更届(げつへん)です。

随時改定が必要になる3つの条件は?

①固定的賃金の変動、②変動月からの3か月とも支払基礎日数17日以上、③3か月平均が従来の標準報酬月額と2等級以上の差、の3つすべてを満たしたときに行います。

言葉にすると難しそうですが、順番に見れば大丈夫です。

  1. 固定的賃金が変わった——昇給・降給、時給単価の変更、手当の新設・廃止・増減など
  2. 変動した月から3か月、支払基礎日数がいずれも17日以上ある
  3. その3か月の平均で出した標準報酬月額が、今の等級と2等級以上違う

最初の分かれ目は「固定的賃金かどうか」。ここでつまずく方が多いので、表にしておきますね。

固定的賃金に当たるもの・当たらないもの
区分具体例
当たる(変動があれば判定スタート)基本給の昇給・降給、時給・日給の単価変更、役職手当・家族手当・住宅手当・通勤手当の新設・廃止・増減、給与体系の変更
当たらない(これだけでは判定しない)残業手当の増減、歩合給の出来高部分の増減、臨時の一時金

そして少しややこしいのがここ。3か月の平均を出すときは、残業代など変動する賃金もぜんぶ含めて計算します。「きっかけは固定的賃金、計算は全部込み」——この合言葉だけ覚えて帰ってください。

保険料はいつの給与から変わる?

変動月から数えて4か月目に標準報酬月額が改定され、その月分の保険料から新しい額になります。10月昇給なら翌年1月分からの改定です。

たとえば10月支給分から昇給したら、10月・11月・12月の3か月で判定して、条件を満たせば1月分の保険料から変わります。お給料からの控除が「翌月控除」の会社なら、実際に天引き額が変わるのは2月支給分。「昇給からずいぶん先なんですね」と驚かれますが、これで正常です。

随時改定で決まった標準報酬月額は、改定月が1〜6月なら当年8月分まで、7〜12月なら翌年8月分まで使われます。次の定時決定との関係が変わるところなので、給与担当の方はメモしておくと安心です。

残業代が増えただけでは対象にならない?

なりません。残業代や歩合の出来高部分など非固定的賃金だけの増減は、どれだけ大きくても随時改定の対象外です。

繁忙期に残業が続いて、3か月連続でお給料が跳ね上がっても——基本給や手当が動いていなければ、月額変更届は不要です。その場合の保険料の見直しは、翌年の定時決定(4〜6月の報酬で年1回見直す仕組み)まで待つことになります。

もうひとつ、知っておいてほしいのが「方向の一致」。固定的賃金は上がったのに、残業が減って3か月平均は2等級以上下がった——こんなふうに、きっかけと結果の方向がちぐはぐな場合、随時改定は行いません。ここは間違えやすいので、迷ったら判定の前にご相談くださいね。

小規模法人がつまずくポイントは?

よくあるのは、最低賃金対応の時給アップを随時改定と結びつけない、通勤手当の変更を見落とす、さかのぼり昇給の起算月を間違える、の3つです。

10月に時給を上げて、1月の改定を忘れる
最低賃金の改定に合わせた時給アップも、立派な「固定的賃金の変動」です。10月に単価を上げたパートさんは10〜12月で判定して、2等級以上の差が出れば1月改定。「定時決定で見直したばかりだから」とスルーしてしまうミスが、毎年必ず起きています。

通勤手当・住宅手当の変更を見落とす
お引っ越しで通勤手当が変わった——これも固定的賃金の変動なんです。基本給が動いていなくても判定はスタートします。従業員さんの住所変更の届出と、随時改定の判定をセットにしておきましょう。

さかのぼり昇給の起算月を間違える
昇給を数か月さかのぼって実施した場合は、差額をまとめて支払った月が「変動月」。そして平均の計算からは差額分を除きます。昇給の効力発生月から数えるのではない、というのが落とし穴です。

今日やることチェックリスト

直近の昇給・手当変更・時給改定を一覧にして、随時改定の判定漏れがないかを見るところから始めましょう。

  • 直近6か月の昇給・降給・手当変更・時給改定の対象者を書き出す
  • 変動月から3か月の報酬平均を出して、今の等級と2等級以上の差がないか確認する
  • 10月に時給改定を予定しているなら、翌年1月の判定をカレンダーに登録する
  • 住所変更・通勤経路変更の届出用紙に「通勤手当変更=随時改定の判定」とメモを添える
  • 該当者が出たら、月額変更届を速やかに提出する(電子申請もできます)

よくある質問

随時改定と定時決定が重なったらどうなりますか?

随時改定が優先します。7月から9月までのいずれかの月に随時改定が行われる(予定を含む)方は、その年の定時決定の対象から外れます。算定基礎届を出すときに、該当する方を備考欄などで明示してくださいね。

育休明けに時短勤務で給与が下がりました。2等級差がなくても見直せますか?

見直せます。「育児休業等終了時改定」という別の制度があり、ご本人の申出があれば1等級の差でも改定できます。産前産後休業の終了時にも同じ仕組みがあります。通常の随時改定とは要件が違うので、時短勤務の方には制度があることをぜひ案内してあげてください。

2等級以上の差があるかは、どうやって確認すればいいですか?

3か月の報酬平均額を標準報酬月額の等級表(保険料額表)に当てはめて、今の等級と比べます。等級表は日本年金機構・協会けんぽのサイトで公開されていますし、給与ソフトの多くは自動で判定してくれます。

月額変更届の提出期限はいつですか?

条件に該当したら速やかに提出、が答えです。提出が遅れても改定月は変わらないので、遅れた分だけ保険料の差額精算がさかのぼって発生してしまいます。変動月から3か月分の給与が確定したら、その月の給与計算とセットで判定する——この習慣にしておくと漏れませんよ。

まとめ:「きっかけは固定的賃金、計算は全部込み、改定は4か月目」

随時改定は「固定的賃金の変動→3か月17日以上→2等級以上の差→4か月目に改定」の流れで判定できます。残業代だけの増減は対象外です。

昇給は従業員さんにとって嬉しいニュースですが、数か月後に保険料が上がって「あれ、手取りが思ったより増えてない…」となることがあります。改定のタイミングをあらかじめ伝えておくだけで、給与明細を見た従業員さんの「?」を防げますよ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

随時改定の判定、お手伝いします

「この昇給、随時改定に当たる?」「過去に届出漏れがないか不安…」——そんなときは、おひとりで悩まずにご相談くださいね。給与計算・社会保険手続きのことはアプト社会保険労務士事務所がお手伝いします。

お問い合わせ

アプト社会保険労務士事務所(千代田区)/給与計算・入退社手続き・就業規則・人事労務相談 監修:★監修者名★(社会保険労務士)
※本記事は2026年9月8日時点の公表情報に基づいています。個別の判定は管轄の年金事務所または専門家にご確認ください。

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