【この記事の要約】
就業規則の作成・届出義務があるのは「常時10人以上の労働者を使用する事業場」です(労働基準法89条)。従業員9人以下の会社に法律上の作成義務はありません。ただし「10人」にはパート・アルバイトも含まれるため、正社員6人+パート4人なら届出が必要です。また、10人未満の小規模法人でも、1. 助成金の申請要件、2. 労務トラブルの予防、3. 懲戒処分の根拠、という3つの理由から就業規則を作成するメリットは非常に大きいといえます。
1. 従業員10人未満でも就業規則は必要?法律上の義務は「ありません」
「うちは従業員5人の小さな会社だから、就業規則なんてまだ早い」――千代田区で社会保険労務士をしていると、小規模法人の経営者様からこうしたご相談をよくいただきます。
労働基準法89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者に対して、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出ることを義務付けています。つまり、常時使用する労働者が9人以下の事業場には、作成義務も届出義務もありません。作成しなくても罰則はなく、法律違反にもなりません。
ただし、この「10人」の数え方には注意点が2つあります。ここを誤解して「実は義務があった」というケースが小規模法人では少なくありません。
2. 「10人」の数え方:パート・アルバイトは含む?店舗ごと?
パート・アルバイトも人数に含まれます: 「常時10人以上の労働者」には、正社員だけでなくパート・アルバイト・契約社員など、雇用形態を問わずすべての労働者が含まれます。
| 従業員構成の例 | カウント | 作成義務 |
|---|---|---|
| 正社員8人 | 8人 | なし |
| 正社員6人+パート4人 | 10人 | あり |
| 正社員3人+アルバイト8人 | 11人 | あり |
| 正社員9人+派遣社員2人 | 9人(派遣は派遣元でカウント) | なし |
会社単位ではなく「事業場」単位で数えます: カウントは法人全体ではなく、本社・支店・店舗など場所ごとの事業場単位です。従業員18人の会社でも、本店9人・支店9人に分かれていれば、それぞれの事業場では作成義務がありません。逆に1店舗に10人以上いれば、その店舗について作成・届出が必要です。
なお、繁忙期だけ一時的に10人を超える場合は「常時10人以上」には当たりませんが、常態として10人以上が働いているなら義務が発生します。
3. 義務がなくても作るべき!小規模法人が就業規則を作成する3つの理由
理由① 助成金の多くは就業規則の整備が申請要件: キャリアアップ助成金をはじめ、雇用関係の助成金の多くは就業規則(10人未満の事業場では就業規則または労働協約等)の整備・改定が支給要件に含まれています。「助成金を使いたいが就業規則がないので申請できない」というのは、小規模法人で最もよくあるつまずきです。従業員数名の段階で整備しておけば、人を増やすタイミングで助成金をスムーズに活用できます。
理由② 労務トラブルが起きたとき「ルールがない」状態は会社が不利: 遅刻・無断欠勤への対応、SNSへの不適切投稿、退職時の引き継ぎ拒否――従業員が数人でも労務トラブルは起こります。就業規則がないと「会社のルール」が文書として存在しないため、注意指導や処分の根拠を示せず、会社側が不利になりがちです。従業員が少ない会社ほど1人のトラブルが経営に与える影響は大きく、人数が少ないからこそルールの明文化がリスク対策になります。
理由③ 懲戒処分は就業規則の根拠規定がないと原則できない: 意外に知られていませんが、減給・出勤停止・懲戒解雇などの懲戒処分は、就業規則に懲戒の種類と事由が定められていなければ原則として行えません(判例法理)。問題社員への対応が必要になってから慌てて作成しても、その従業員に遡って適用することはできません。
4. 従業員が10人以上になったら?作成・届出の流れと罰則
パート採用などで常時10人以上になったら、次の手順で届出が必要です。
- 就業規則の作成(絶対的必要記載事項:労働時間・賃金・退職に関する事項など)
- 従業員代表からの意見聴取(意見書の作成。同意までは不要です)
- 所轄の労働基準監督署へ届出(就業規則+意見書を提出)
- 従業員への周知(労働基準法106条。事業所への備え付け、社内サーバー掲示など)
【注意】義務があるのに届出をしない場合は30万円以下の罰金(労働基準法120条)の対象となるほか、労働基準監督署の調査(臨検)で是正勧告を受ける典型的な指摘事項でもあります。
5. よくある質問(FAQ)
Q. 従業員10人未満の会社に就業規則の作成義務はありますか?
A. ありません。労働基準法89条の義務対象は「常時10人以上の労働者を使用する事業場」です。ただし助成金申請やトラブル予防のため、任意で作成する小規模法人が増えています。
Q. パートやアルバイトも10人のカウントに含まれますか?
A. 含まれます。雇用形態を問わず、常態として使用する労働者すべてが対象です。派遣社員は派遣元でカウントするため含まれません。
Q. 就業規則がないと助成金は申請できませんか?
A. キャリアアップ助成金など多くの助成金で就業規則等の整備が要件になっており、実質的に作成が必要になるケースが多いです。
Q. 社労士に作成を依頼した場合の費用相場はいくらですか?
A. 新規作成でおおむね10万円〜30万円程度が一般的です。本則のみか、賃金規程・育児介護休業規程など諸規程まで含むかで変わります。当事務所の料金は料金案内ページをご覧ください。
Q. インターネットのひな形をそのまま使ってもいいですか?
A. おすすめしません。ひな形は大企業向けの条文が混ざっていることが多く、実態に合わない規定(手厚すぎる休職制度など)がそのまま会社の義務になってしまうリスクがあります。小規模法人こそ、自社の実態に合わせた調整が重要です。
アプト社会保険労務士事務所からのアドバイス
従業員10人未満の会社にとって、就業規則は「義務ではないが、経営を守る投資」です。特に、労使関係が良好で従業員数が少ない「今」のうちに整備しておくことが、最もスムーズかつ低コストです。人を増やすタイミングでの助成金活用、労務トラブルの予防、いずれも就業規則が土台になります。千代田区を中心に、小規模法人様の就業規則作成・助成金を見据えた規程整備のご相談を承っております。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

