従業員の採用から退職までには、社会保険の手続きや税務処理など、数多くの労務手続きが発生します。この記事では、人事労務担当者が行うべき手続きを「入社時」「在職中」「退社時」の3つのステージに分け、それぞれ必要な作業を網羅的に解説します。手続き漏れを防ぐためのチェックリストも用意しており、これさえ読めば全体像が掴めます。

【ステージ1】従業員入社時の手続き

新しい仲間を迎える入社時は、手続きが最も集中する時期です。漏れがあると、後の給与計算や社会保険適用に影響が出るため、慎重に進めましょう。

提出してもらう書類

  • 年金手帳(または基礎年金番号通知書)
  • 雇用保険被保険者証(前職で加入していた場合)
  • 源泉徴収票(その年に前職がある場合)
  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 健康保険被扶養者(異動)届(扶養家族がいる場合)
  • 給与振込先の届書

会社側で行う手続き

  1. 労働条件通知書(兼 雇用契約書)の交付
  2. 法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の作成・整備
  3. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の提出(年金事務所へ)
  4. 雇用保険被保険者資格取得届の提出(ハローワークへ)
入社手続きに必要な書類一式が並べられたデスクの画像。

【ステージ2】従業員在職中の手続き

在職中も、ライフイベントの変化や法改正に応じて様々な手続きが必要になります。

主な手続き一覧

  • 住所・氏名変更: 各種保険の氏名・住所変更届
  • 家族の扶養追加/削除: 健康保険被扶養者(異動)届
  • 産休・育休: 産前産後休業取得者申出書、育児休業給付金の申請
  • 労働保険の年度更新: 年に一度、労働保険料を計算・申告(毎年6月1日~7月10日)
  • 社会保険の算定基礎届: 年に一度、標準報酬月額を見直し(毎年7月1日~7月10日)

特に年度更新や算定基礎届は、全従業員に関わる重要な手続きです。詳しい進め方は専門家への相談もご検討ください。

【ステージ3】従業員退社時の手続き

従業員が退職する際は、感謝の気持ちと共に、以下の手続きを正確に行う必要があります。

退職者へ渡すもの

  • 雇用保険被保険者離職票(本人が希望する場合)
  • 源泉徴収票(その年の1月1日から退職日までの分)
  • 健康保険被保険者資格喪失証明書
  • 年金手帳

会社側で行う手続き

  1. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出(年金事務所へ)
  2. 雇用保険被保険者資格喪失届の提出(ハローワークへ)
  3. 住民税の異動届の提出(各市区町村へ)
退職する従業員に書類を手渡している人事担当者のイラスト。

※記事の最後にダウンロード可能なチェックリストをご用意しています!

よくある質問(FAQ)

Q1: パート・アルバイトでも社会保険に加入させる義務はありますか?

A1: はい、あります。1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で働く正社員の4分の3以上である場合は、原則として加入義務があります。また、この基準に満たなくても、従業員101人以上の企業などでは、特定の要件を満たす短時間労働者も加入対象となります。

Q2: 「離職票」と「退職証明書」の違いは何ですか?

A2: 「離職票」は、退職者がハローワークで失業手当(基本手当)の受給手続きをするために必要な公的書類です。一方、「退職証明書」は、会社が退職したことを証明する私的な文書で、転職先の企業から提出を求められたり、国民健康保険の加入手続きに使われたりします。

Q3: 入社した従業員がすぐに辞めてしまいました。それでも社会保険の手続きは必要ですか?

A3: はい、必要です。たとえ1日でも在籍すれば、社会保険の「資格取得手続き」と「資格喪失手続き」の両方を行わなければなりません。同月内に取得と喪失があった場合は、厚生年金保険料が1ヶ月分発生しますのでご注意ください。


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