「employee retention(エンプロイー・リテンション)」とは、日本語で「従業員定着率」を意味し、企業が人材を維持する能力のことです。採用難が続く現代において、優秀な人材の流出は中小企業の経営に大きな打撃を与えます。この記事では、なぜ従業員が辞めてしまうのか、その原因を探り、明日から実践できる従業員リテンション改善策を7つご紹介します。
従業員が会社を去る、本当の理由
従業員の離職理由は、単に「給与が低い」だけではありません。多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合っています。
- 人間関係の問題: 上司や同僚とのコミュニケーション不全。
- 評価への不満: 自分の頑張りが正当に評価されていないと感じる。
- キャリアへの不安: この会社にいても成長できない、将来が見えない。
- 長時間労働とワークライフバランス: プライベートな時間が確保できない。
これらの課題に目を向けず、採用コストばかりをかけていては、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。
中小企業でもできる!従業員リテンション改善策7選
大企業のような手厚い福利厚生がなくても、工夫次第で従業員の定着率を高めることは可能です。
- 1on1ミーティングの定期開催: 上司と部下が週に1回、30分でも良いので対話の時間を設ける。業務の進捗だけでなく、キャリアや悩みを話せる関係性を築く。
- 明確な評価制度の構築: 何を達成すれば評価され、昇給・昇格につながるのかを可視化する。
- サンクスカードの導入: 従業員同士が日々の感謝を伝え合う文化を作る。承認欲求を満たし、ポジティブな職場環境を醸成する。
- 小さな成功体験を称賛する: 大きな成果だけでなく、日々の小さな頑張りや改善を朝礼などで共有し、称賛する。
- スキルアップ支援: 資格取得支援や外部研修への参加費用補助など、従業員の成長意欲をサポートする。
- 柔軟な働き方の導入: 時差出勤や時短勤務、週休3日制の検討など、従業員のライフステージに合わせた働き方を可能にする。
- 経営理念・ビジョンの共有: 会社の目指す方向性を定期的に伝え、自分の仕事がどう社会に貢献しているかを実感させる。
これらの施策は、従業員が「自分は会社から大切にされている」と感じるための重要なステップです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 従業員リテンションを高めることで、会社にどんなメリットがありますか?
A1: 主なメリットとして、①採用・教育コストの削減、②ノウハウや技術の社内蓄積、③従業員の士気向上による生産性の向上、④顧客満足度の向上(従業員満足度と相関関係があるため)、⑤企業イメージの向上などが挙げられます。人材定着は、企業の持続的な成長に不可欠な要素です。
Q2: 離職率の目安はどれくらいですか?どこからが「高い」と言えますか?
A2: 離職率は業界や職種によって大きく異なります。例えば、宿泊・飲食サービス業は高く、製造業や建設業は低い傾向にあります。自社の離職率が高いかどうかは、厚生労働省が公表している「雇用動向調査」などで、同業種の平均値と比較して判断するのが一般的です。
Q3: 従業員のエンゲージメントとリテンションは違うものですか?
A3: はい、似ていますが異なります。リテンションが「定着率(会社に留まっているか)」という結果指標であるのに対し、エンゲージメントは「従業員の会社への愛着や貢献意欲」といった、そのプロセスや心理状態を指します。一般的に、エンゲージメントが高い従業員は定着率も高い傾向にあるため、リテンションを高めるにはエンゲージメント向上の施策が有効です。