従業員リテンション対策の費用対効果は?放置した場合の推定損失額【定量分析】
従業員の離職が会社にとって痛手であることは誰もが理解していますが、その経済的損失を具体的に計算したことはありますか? 本記事では、従業員1名の離職がもたらす直接的・間接的なコストを定量的に分析。対策を怠った場合の推定損失額をシミュレーションし、従業員リテンションへの投資がいかに高い費用対効果を持つかを明らかにします。
従業員が1人辞めると、会社はいくら損をするのか?
従業員の離職に伴うコストは、単に欠員を補充するための採用費だけではありません。目に見えにくい様々なコストが発生し、企業の収益を圧迫します。
見えるコスト:採用費と教育研修費
これらは比較的計算しやすい直接的なコストです。
- 採用コスト: 求人広告費、人材紹介会社への手数料、採用担当者の人件費など。一般的に、年収の30%~50%かかると言われています。
- 教育研修コスト: 新入社員研修、OJT担当者の人件費、外部研修費用など。新人が一人前になるまでの数ヶ月間、会社は給与を払いながら投資を行っているのです。
見えないコスト:生産性の低下とノウハウの流出
本当に恐ろしいのは、こちらの「見えないコスト」です。
- 代替要員の業務負荷増大: 離職者の業務を残った従業員がカバーするため、残業が増え、全体の生産性が低下します。
- 新人の生産性: 新しい担当者が前任者と同じレベルで業務をこなせるようになるまでには時間がかかり、その間の生産性は著しく低くなります。
- 組織的ノウハウの喪失: 退職者が持っていた知識、経験、顧客との関係性といった無形資産が失われる損失は計り知れません。
【シミュレーション】年収500万円の社員が離職した場合の損失額
仮に、年収500万円の中堅社員が1名離職した場合の損失額を試算してみましょう。
1. 採用コスト: 年収の35%と仮定 → 175万円
2. 教育コスト: OJT担当者の人件費等 → 50万円
3. 生産性低下コスト:
- 代替要員の残業代・効率低下: 30万円/月 × 3ヶ月 → 90万円
- 新人の生産性低下(一人前になるまで半年と仮定): (500万円/12ヶ月) × 50% × 6ヶ月 → 125万円
これらを合計すると、最低でも440万円以上の損失が発生する計算になります。これは、離職者の年収に匹敵する、あるいはそれ以上の金額です。
リテンション対策は「コスト」ではなく「投資」である
年間数名の離職者が出ている企業であれば、その損失額は数千万円にのぼる可能性もあります。一方で、効果的なリテンション施策にかかる費用は、この損失額のごく一部で済むことがほとんどです。例えば、研修制度の充実や1on1ミーティングの導入などは、大きな設備投資を必要としません。
離職率1%改善がもたらす利益インパクト
従業員100名の企業で離職率が10%から9%に改善したとします。これは1名の離職を防いだことになり、上記のシミュレーションに基づけば、約440万円の損失を回避できたことになります。これは、そのまま企業の利益改善に直結します。従業員リテンションへの取り組みは、極めてROI(投資収益率)の高い経営戦略なのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 離職コストの計算で最も重要な項目は何ですか?
A1. 「見えないコスト」である生産性の低下とノウハウの流出です。採用費などの「見えるコスト」は把握しやすいですが、残された従業員の負担増やチーム全体のパフォーマンス低下といった間接的な影響の方が、長期的にはるかに大きな損害となるケースが多いです。
Q2. リテンション投資の費用対効果は、どのように測れば良いですか?
A2. 施策導入前後の「離職率」の変化を追うのが最も分かりやすい指標です。それに加え、「エンゲージメントサーベイのスコア」「従業員一人当たりの生産性」「採用コスト」などのKPIを定点観測することで、多角的に効果を測定できます。
Q3. コストをかけずにできるリテンション対策はありますか?
A3. あります。例えば、経営者や上司が従業員と定期的に1on1で対話し、キャリアの相談に乗ったり、感謝の気持ちを伝えたりすることは、コストをかけずにエンゲージメントを高める非常に効果的な方法です。まずは「対話」の機会を増やすことから始めることをお勧めします。