知らないと危険!スポットワーク(ギグワーク)に潜む法的リスクと正しい労務管理
人手不足の解消策として「スポットワーク」を活用する企業が急増しています。しかし、その手軽さの裏に大きな法的リスクが潜んでいることをご存知でしょうか?
最近の厚生労働省の見解により、「応募完了時点で労働契約が成立する」というルールが明確化されました。これは、従来の安易な運用がもはや通用しないことを意味します。本記事では、スポットワークに潜む具体的なリスクと、経営者が今すぐ取るべき対策を分かりやすく解説します。
「応募=契約成立」がもたらす3つの重大リスク
厚生労働省は、スポットワーカーがアプリ等で応募を完了した時点で「解約権留保付労働契約」が成立するとの見解を示しました。これにより、企業は以下の義務を負うことになります。
「とりあえず多めに募集して、集まった人数で調整しよう」という考えは非常に危険です。
労働契約成立後、会社の都合で仕事をキャンセルした場合(ドタキャン)、それは労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。結果として、企業はワーカーに対し、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。
例えば、時給1,500円で4時間の仕事をキャンセルした場合、少なくとも「1,500円 × 4時間 × 60% = 3,600円」の支払い義務が発生します。これが積み重なれば、大きなコスト負担となります。
労働契約が成立する以上、企業はワーカーに対して事前に労働条件を明示する義務(労働基準法第15条)を負います。明示すべき主な内容は以下の通りです。
- 就業場所、業務内容
- 労働時間、休憩、休日
- 賃金の決定・計算・支払方法、支払時期
これを怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。仲介事業者のアプリ上で表示されるからといって、企業側の責任が免除されるわけではありません。
労働時間には、実作業時間だけでなく、業務に必要な準備や片付け、朝礼、着替えの時間も含まれます。これらの時間を労働時間として計算し、賃金を支払わなければ違法となります。
また、約束した交通費を支払わない、一方的に賃金を引き下げるといった行為も当然ながら許されません。スポットワークであっても、通常の雇用と変わらない厳格な管理が求められます。
【実践】スポットワーク労務リスク・セルフチェックリスト
自社の運用が適切かどうか、以下の項目でチェックしてみましょう。一つでもチェックが付かない項目があれば、早急な見直しが必要です。
自社のスポットワーク活用は大丈夫?
まとめ:スポットワークは「高度な労務管理」が求められる経営課題
スポットワークは、もはや単なる「便利なバイト探し」のツールではありません。厚生労働省の新見解により、企業は短期・単発の雇用契約を大量かつ正確に管理するという、高度な労務管理能力を求められるようになりました。
リスクを回避し、この新しい働き方を有効活用するためには、以下の2点が不可欠です。
- 人員計画の精度向上:安易な募集がコスト増に直結することを認識し、需要予測を徹底する。
- 管理体制の構築:労働条件の明示から勤怠管理、給与計算まで、コンプライアンスを遵守した事務フローを確立する。
この変化を機に、自社の労務管理体制を一度見直してみてはいかがでしょうか。