人手不足の救世主!「年収の壁」を壊し、パート戦力化を進める助成金活用術
こんにちは、社会保険労務士の氏家です。
「もっとシフトに入ってほしいのに、『年収の壁』があるからと断られてしまう…」
多くの経営者様が、このような悩みを抱えています。いわゆる「106万円の壁」「130万円の壁」は、パート・アルバイト従業員の就業調整(働き控え)を引き起こし、深刻な人手不足の一因となっています。
しかし、この問題を「仕方ないこと」と諦める必要はありません。国の支援策をうまく活用すれば、むしろ従業員の労働時間を増やし、会社の成長につなげるチャンスに変えることができるのです。
なぜ「年収の壁」で働き控えが起きるのか?
ご存知の通り、年収が一定額(従業員数51人以上の企業なら約106万円、それ以外は130万円が目安)を超えると、社会保険への加入義務が発生し、保険料が天引きされます。これにより、年収は増えたのに手取りが減ってしまう「逆転現象」が起きてしまうのです。これでは、従業員が働く時間をセーブしようとするのも無理はありません。
この問題は、2024年10月から社会保険の適用対象が「従業員51人以上」の企業に拡大されたことで、より多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
国の解決策:「キャリアアップ助成金」という追い風
この状況を打開するため、政府は強力な支援策を用意しました。それが、キャリアアップ助成金の「短時間労働者労働時間延長支援コース」です。
これは、会社が従業員の労働時間を延長し、社会保険に加入させるなどの取り組みを行った場合に、従業員一人あたり最大40万円(中小企業の場合)もの助成金が支給されるというものです。
【戦略】助成金を原資に「壁」を越えさせる!
この助成金をどう活用するかが、経営者の腕の見せ所です。単に労働時間を延ばしてもらうだけでは、従業員の手取りは減ってしまいます。そこで、次のような戦略が考えられます。
- 「社会保険適用促進手当」を創設する:助成金を原資として、社会保険料負担を補うための新しい手当を支給します。これにより、従業員は手取りの減少を気にせず、安心して壁を越えることができます。
- 基本給をアップする:より直接的に、労働時間延長に応じて時給や基本給を引き上げます。
会社としては、助成金によって人件費増をカバーしつつ、意欲のある従業員に長く働いてもらうことができます。従業員にとっては、手取りが確保されるだけでなく、将来の年金が増えるというメリットもあります。まさにWin-Winの関係を築くことができるのです。
まとめ:守りから攻めの人事戦略へ
「年収の壁」問題は、もはや頭の痛いコスト管理の問題ではありません。助成金を活用し、パート・アルバイト従業員のキャリア形成を支援することで、人材を定着させ、生産性を向上させるための戦略的な人事投資と捉えるべきです。
まずは、自社のパート・アルバイト従業員の中で、就業調整をしている可能性のある方をリストアップし、意向を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。制度設計や助成金の申請手続きについては、我々社労士が全面的にサポートいたします。この機会を逃さず、貴社の成長につなげていきましょう。