カスハラ対策は企業の義務!社員を守り、ブランド価値を高める実践的フレームワーク

2025年6月28日 / ハラスメント対策

「お客様からのクレームが、だんだんエスカレートしてきている…」
「対応した社員が精神的に疲弊し、辞めてしまった…」

顧客からの悪質なクレームや不当な要求、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が、今や深刻な社会問題となっています。

2025年4月には東京都で「カスハラ防止条例」が施行されるなど、法制化の動きも加速しており、企業には従業員を守るための具体的な対策が、これまで以上に強く求められています。

カスハラは、社員の心身を傷つけ、離職につながるだけでなく、企業の評判を落とし、生産性を阻害する重大な経営リスクです。本記事では、企業が今すぐ取り組むべきカスハラ対策について、実践的なフレームワークを交えて解説します。

「お客様は神様」の時代は終わった。カスハラを放置する3つのリスク

日本には「お客様は神様」という言葉があるように、顧客を丁重に扱う文化が根付いています。しかし、その考え方が行き過ぎると、理不尽な要求までものまざるを得ない状況を生み出してしまいます。

カスハラを「仕方ないこと」として放置すると、企業は以下の3つのリスクを抱えることになります。

  • 人材流出のリスク:カスハラの矢面に立つのは、現場の社員です。心身が疲弊し、「会社が守ってくれない」と感じた社員は、やがて離職してしまいます。人手不足の時代に、これ以上の損失はありません。
  • 生産性低下のリスク:一部の悪質なクレーマーへの対応に、多くの時間と精神的エネルギーが奪われます。その結果、他の大切なお客様へのサービス品質が低下し、組織全体の生産性が落ちてしまいます。
  • ブランド毀損のリスク:SNSの普及により、企業の対応は瞬時に拡散されます。毅然とした対応ができない企業は、「従業員を大切にしない会社」というレッテルを貼られ、ブランドイメージや採用競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。

現場で使える!カスハラ対応 実践フレームワーク

現場で最も判断が難しいのが、正当なクレームと不当な要求の境界線です。社員が一人で抱え込まず、組織として一貫した対応が取れるよう、社内でルールを明確にしておきましょう。

レベル 状況の定義 対応のポイント
レベル1:
正当なクレーム
商品・サービスへの具体的な指摘、企業の過失に対する合理的な改善要求 傾聴と共感:まずは最後まで話を聞き、誠実に謝罪する。
迅速な解決:社内規定に基づき、代替品提供や返金などで迅速に対応する。
レベル2:
グレーゾーン
(過剰・不当な要求)
土下座の強要、過剰な金銭要求、長時間の拘束、執拗なクレームの繰り返し エスカレーション:担当者一人で対応せず、速やかに上司に報告・交代する。
記録の徹底:日時、相手の発言、対応内容を詳細に記録する。
毅然とした境界設定:「そのご要求にはお応えできかねます」と、できないことは明確に伝える。
レベル3:
明確なハラスメント
(脅迫・暴力・人格否定)
脅迫的な言動、暴行、暴言、差別的発言、退去要求に応じない 警告:「これ以上の言動は迷惑行為とみなし、対応を打ち切ります」と明確に警告する。
対応の打ち切り:警告後も行為が続く場合は、通話を終了、またはその場から離れる。
外部機関との連携:身の危険を感じる場合は、ためらわずに警察に通報する。

企業として今すぐ整備すべきこと

このフレームワークを機能させるためには、会社としてのバックアップ体制が不可欠です。

  • 対応マニュアルの作成と研修の実施:上記のような対応方針を明文化し、全社員で共有する。ロールプレイング研修なども有効です。
  • 相談窓口の設置:社員が安心して相談できる窓口を設置し、対応した社員の精神的ケアを行う。
  • 「従業員を守る」という方針の社外への明示:企業のウェブサイトや店舗に、ハラスメント対応方針を掲示することも、悪質な要求への抑止力となります。

まとめ

企業が「従業員を守る」という姿勢を明確に示すこと。それは、現代において最も効果的な人材定着(リテンション)戦略の一つです。

カスハラ対策は、もはや単なるリスク管理ではありません。従業員が安心して働ける安全な職場環境を提供することは、従業員のエンゲージメントとロイヤルティを高め、顧客へのサービス品質向上にもつながります。そして、その毅然とした姿勢こそが、企業のブランド価値を向上させるのです。

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