ブログ記事シリーズ第3回:「70歳まで働く時代」の到来!高齢者雇用で企業が陥る罠と成功の秘訣
65歳までの雇用は義務化されたが、正直、処遇をどうすればいいか悩んでいる
経験豊富なシニア社員に、まだまだ活躍してほしいが、モチベーションをどう維持すれば…
2025年4月、65歳までの雇用確保が完全に義務化され、日本は本格的な「70歳就業時代」に突入します。人手不足に悩む企業にとって、経験豊富な高齢社員は貴重な戦力です。しかし、その活用方法を誤ると、人件費の増大や本人のモチベーション低下といった問題を引き起こしかねません。
本記事では、多くの企業が陥りがちな高齢者雇用の「罠」を解説し、シニア社員が活き活きと働き続けられる組織を作るための成功の秘訣を探ります。
罠1:給与が下がり、やりがいも下がる「とりあえず再雇用」
最もよくある失敗が、60歳の定年時に一律で給与を大幅に下げ、責任の軽い役職に就かせる「再雇用」制度です。
この方法は、一見すると人件費を抑制できるように見えます。しかし、昨日まで部長として第一線で活躍していた社員が、翌日から嘱託社員として給与も権限も大幅に下がれば、モチベーションを維持するのは困難です。
さらに追い打ちをかけるように、60歳以降の賃金低下を補填してきた「高年齢雇用継続給付」も、2025年4月から給付率が引き下げられます。これまで以上に、賃金の低下は社員の生活に直接的な影響を与えることになるのです。
やりがいを失ったシニア社員が増えれば、職場全体の士気も下がり、若手への技術やノウハウの継承も進まなくなってしまいます。
罠2:昔のままの賃金体系による「人件費の高騰」
一方で、従来の年功序列型の賃金体系を維持したまま定年を延長すると、人件費が高騰し、経営を圧迫するリスクがあります。特に体力の限られる中小企業にとっては、深刻な問題です。
「貢献度」と「賃金」のバランスが取れていない状態は、若手や中堅社員の不満にもつながりかねません。「なぜ、あのシニア社員は自分より高い給与をもらっているのか」という疑問は、組織の一体感を損なう原因となります。
成功の秘訣は「年齢」ではなく「役割と貢献」で評価すること
これらの罠を回避し、高齢者雇用を成功させるための鍵は、人事制度を「年齢」というものさしから解放し、「役割(ジョブ)」と「貢献」に基づいて再設計することです。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
役職定年の見直し・廃止
60歳になったからといって、一律に役職から外すのではなく、本人の能力と意欲があれば、同じ役割と責任を担い続けてもらう。その場合は、処遇も維持する。
多様なキャリアパスの用意
- 専門職コース:長年の経験で培った専門性を活かし、現場のプロフェッショナルとして活躍してもらう。
- メンター・顧問コース:若手社員の指導・育成や、技術・ノウハウの伝承を主な役割とする。
- 短時間勤務コース:体力やライフプランに合わせ、勤務時間や日数を減らして働き続けてもらう。
役割に応じた公正な評価と処遇
担う役割の大きさと、その成果(貢献)に応じて、給与や賞与を決定する。これにより、年齢に関わらず、誰もが納得感を持って働けるようになります。
これは、いわば「ジョブ型雇用」の考え方を、高齢者雇用に取り入れるということです。このメリハリの効いた制度設計こそが、シニア社員のモチベーションを維持し、企業の人件費負担を適正化する、唯一の道と言えるでしょう。
まとめ
70歳就業時代は、すべての企業にとって避けては通れない現実です。シニア社員を「コスト」と捉えるか、「貴重な資産」と捉えるかで、5年後、10年後の企業の姿は大きく変わります。
この変化を、単なる義務として受け身で対応するのではなく、多様な人材が年齢に関わらず活躍できる、強い組織を作るためのチャンスと捉えましょう。経験豊富なシニア社員が、その知識とスキルを次世代に継承し、若手と共に成長していく。そんな企業こそが、これからの時代を勝ち抜いていくのです。
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