36協定を労働基準監督署に提出し、一安心していませんか?実は、本当の労務管理はそこから始まります。この記事では、36協定の上限時間を超えてしまうリスクを防ぎ、日々の業務で健全な労働環境を維持するための具体的な勤怠管理と運用の実務ポイントを解説します。法律違反を未然に防ぐための実践的なノウハウがわかります。

なぜ「提出後の運用」が重要なのか?

36協定は、あくまで時間外労働をさせるための「許可証」のようなものです。許可を得たからといって、協定で定めた時間を超えて労働させることはできません。労働基準監督署の調査では、協定の有無だけでなく、実際の労働時間と協定内容が一致しているかが厳しくチェックされます。運用を怠れば、気づかぬうちに法律違反を犯してしまうリスクがあるのです。

上限を超えないための勤怠管理3つの鉄則

日々の運用で法律違反を防ぐためには、以下の3つのポイントを徹底することが不可欠です。

1. 労働時間の正確な把握

まずは、従業員一人ひとりの労働時間を1分単位で正確に把握することが大前提です。タイムカード、ICカード、勤怠管理システムなど、客観的な記録に基づいた管理を行いましょう。自己申告制は、実際の労働時間と乖離が生まれやすいため注意が必要です。

勤怠管理システムのダッシュボード画面のイメージ。各従業員の残業時間が可視化されている。

2. 残業時間のアラート機能活用

多くの勤怠管理システムには、設定した時間を超えそうな従業員に対して管理者や本人に通知するアラート機能があります。例えば、「月35時間を超えたら黄色信号」「月40時間を超えたら赤色信号」のように設定することで、上限である45時間に達する前に手を打つことができます。

3. 定期的なモニタリングとフィードバック

月に一度、各部署の管理職と人事担当者が集まり、残業時間の状況を確認する会議を設けましょう。特定の従業員や部署に業務が偏っていないかを確認し、業務分担の見直しや人員配置の検討につなげます。問題が大きくなる前の早期発見が鍵です。

もし上限を超えそうになったら?緊急時の対処法

万が一、月の途中で上限時間に達しそうな従業員が出てきた場合の対処法も準備しておくことが重要です。

  • 業務の優先順位付けと調整: 緊急性の低いタスクを翌月以降に回す。
  • 他部署からの応援: 一時的に他部署から人員を借りて業務を分担する。
  • 代休・休暇取得の奨励: 可能な範囲で休暇を取得してもらい、労働時間を調整する。

これらの運用ルールをあらかじめ定めておくことで、現場の混乱を防ぐことができます。36協定の正しい書き方については、こちらの基礎解説記事もご参照ください。

残業時間を減らすための業務改善ミーティングを行っている風景。

よくある質問(FAQ)

Q1: タイムカードの打刻後にサービス残業をしている従業員がいるようです。どうすればよいですか?

A1: サービス残業は違法です。まずは実態調査を行い、なぜサービス残業が発生しているのか(業務量が多い、評価への懸念など)原因を特定します。その上で、上司から業務量の調整や適切な労働時間管理を行うよう指導し、全社的に労働時間を正しく記録する文化を醸成することが重要です。

Q2: 管理職は労働時間の管理対象外と考えてよいですか?

A2: 労働基準法上の「管理監督者」に該当しない「名ばかり管理職」は、労働時間規制の対象となります。管理監督者と認められるかは、役職名ではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇などの実態に基づいて判断されます。安易な判断は危険ですので、専門家への相談をおすすめします。

Q3: 勤怠管理システムを導入するコストがありません。何か良い方法はありますか?

A3: 無料や低価格で利用できるクラウド型の勤怠管理システムも数多く存在します。まずはスモールスタートで試してみるのも一つの手です。また、Excelなどの表計算ソフトでも、関数を使えば労働時間を自動計算する管理表を作成できます。重要なのは、客観的な記録を毎日正確に残すことです。


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