【2025年改正】育成就労制度で何が変わる?外国人材と成長する企業の新常識
経営者のための労務リスク対策レポート第5回「人手不足の解消のため、外国人材の雇用を考えている」
「技能実習制度がなくなるらしいが、今後はどうなるのだろう?」
「新しい制度では、何に気を付ければいいんだろう?」
日本の深刻な人手不足を背景に、外国人材は多くの企業にとって不可欠な存在です。しかし、従来の「技能実習制度」は様々な課題を抱えていました。
この状況を改めるため、2025年以降、技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労制度」がスタートします。この変更は、外国人材を受け入れる企業にとって、労務管理のあり方を根本から見直す、極めて重要な転換点です。
本記事では、新制度「育成就労」の最大のポイントと、これからの企業に求められる姿勢について、分かりやすく解説します。
新制度の目的は「人材育成」と「人材確保」への転換
まず、制度の目的が大きく変わることを理解する必要があります。
旧)技能実習制度:目的は「国際貢献」。日本で培った技能を母国に持ち帰ってもらうことが建前でした。
新)育成就労制度:目的は「人材育成」と「人材確保」。実態に合わせ、日本で働き続けてもらうことを視野に入れた制度へと明確に変わります。
具体的には、3年間の就労を通じて、一定の専門性・技能を持つ「特定技能1号」のレベルまで人材を育成し、その後の長期就労につなげることを目指します。
最大の変更点:「転籍(転職)」の自由化
受け入れ企業にとって最もインパクトが大きいのが、外国人労働者本人の意向による「転籍(転職)」が、一定の条件下で認められるようになる点です。
これまでの技能実習制度では、原則として転職は認められませんでした。しかし、育成就労制度では、以下の要件を満たせば、同じ業務区分内の別の企業へ移ることが可能になります。
転籍が可能になる主な要件
- 同一の企業で1年~2年以上(分野ごとに設定)働いていること
- 技能検定や日本語能力試験の要件を満たしていること
これは、外国人労働者の権利を守り、キャリア選択の自由を保障するための大きな前進です。しかし、企業側から見れば、経営環境の激変を意味します。
もはや「囲い込み」は不可能。「選ばれる企業」になる努力が必須に
「転籍の自由化」がもたらす現実は、非常にシンプルです。
これまでのように、一度受け入れた人材を低賃金で「囲い込む」ような経営は、もはや通用しません。企業は、日本人社員と同様に、外国人材に対しても「選ばれる」ための努力をしなければ、貴重な人材を失ってしまうのです。
外国人材から「選ばれる企業」になるための視点
- 公正な待遇:同じ仕事をする日本人と同等、あるいはそれ以上の賃金や待遇を保証する。
- 明確なキャリアパス:3年後にどのようなスキルが身につき、どのようなキャリア(特定技能への移行など)が開けるのかを具体的に示す。
- 良好な労働・生活環境:安全な職場環境はもちろん、日本語教育のサポートや地域社会との交流支援など、日本での生活を全面的にバックアップする。
- リスペクトのあるコミュニケーション:文化や習慣の違いを尊重し、一人の人間として対等なコミュニケーションを心がける。
まとめ:これからの企業に求められること
「育成就労制度」への移行は、日本の労働市場が「内なる国際化」の新たなステージに入ることを意味します。国内の人手不足と、外国人材の流動性の向上が組み合わさることで、企業は国籍を問わず、あらゆる人材に対して魅力的でなければ生き残れない時代に突入します。
外国人材を、単なる「労働力」としてではなく、会社と共に成長していく「パートナー」として迎え入れる。そのための公正な人事管理と、インクルーシブ(包括的)な組織文化を構築すること。
それこそが、これからの人手不足時代を乗り越え、多様な人材の力で持続的に成長していくための、唯一の道なのです。
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