「うちはちゃんと36協定を提出しているから大丈夫」と思っていませんか?実は、労働基準監督署の調査(臨検)では、提出されているにも関わらず、内容の不備や運用の問題を指摘されるケースが後を絶ちません。この記事では、専門家の視点から、特に指摘されやすい36協定のNG事例5選を具体的に解説します。他社の失敗から学び、自社のリスクを今すぐチェックしましょう。

NG事例1:協定の当事者(労働者代表)の選出方法が不適切

36協定は、会社側と労働者の過半数を代表する者との間で締結されます。この「労働者代表」の選出方法が民主的でない場合、協定そのものが無効と判断されることがあります。

  • NG例: 会社が一方的に指名した、親睦会の幹事を自動的に代表者にした。
  • OK例: 投票、挙手などの方法で、全労働者が意思表示できる機会を設けて選出した。

選出プロセスが適正であったことを示すため、信任投票の記録などを保管しておくことが重要です。

NG事例2:「業務の種類」の記載が曖昧すぎる

36協定には、時間外労働をさせる必要のある「業務の種類」を具体的に記載する必要があります。ここが曖昧だと、協定の範囲を超えた業務で残業させていると指摘される可能性があります。

  • NG例: 「事務作業」「製造業務」など、範囲が広すぎる記載。
  • OK例: 「経理部門における決算業務」「製品Aの組立・検査業務」など、部署や業務内容で細分化する。
36協定届の「業務の種類」欄に赤ペンで「具体的に!」と追記されているイメージ画像。

NG事例3:実際の労働時間と協定の内容が一致していない

これは最も多い指摘事項です。協定で定めた上限時間を1分でも超えれば法律違反となります。特に、特別条項で定めた「月100時間未満」「複数月平均80時間以内」といった複雑な上限は見落とされがちです。

日々の勤怠管理を徹底し、労働時間を正確に把握する仕組みがなければ、このリスクは防げません。36協定提出後の勤怠管理方法について、こちらの記事で詳しく解説しています。

NG事例4:協定の周知を怠っている

締結した36協定は、事業場の見やすい場所への掲示、書面の交付などの方法で、全従業員に周知する義務があります。周知を怠った場合、協定の効力が否定されることもあるため注意が必要です。

職場の掲示板に36協定が掲示されている写真。

「いつでも誰でも内容を確認できる状態」にしておくことが求められます。

NG事例5:特別条項の「臨時的な理由」が不適切

特別条項は、あくまで「臨時的」な必要性がある場合に限られます。恒常的な長時間労働を前提とした理由は認められません。

  • NG例: 「業務の都合上」「通常業務の繁忙」など、恒常的・慢性的な理由。
  • OK例: 「大規模なリコールへの緊急対応」「サーバーの重大な障害からの復旧作業」など、予測不可能な突発的理由。

自社の理由がこれに該当するか、今一度見直してみましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 労働者代表に、管理職を選んでも良いですか?

A1: いいえ、労働基準法上の「管理監督者」は労働者代表になることはできません。労働者代表は、経営と一体の立場にある者ではなく、労働者の立場から意見を述べられる人物である必要があります。

Q2: 36協定を出し忘れていました。すぐに提出すれば過去の残業は問題なくなりますか?

A2: いいえ、なりません。36協定は、届け出た後からその効力が発生します。届け出る前にさせた時間外労働は、遡って適法になることはなく、法律違反の状態となります。速やかに届け出るとともに、未払い残業代が発生していないか確認が必要です。

Q3: 労働基準監督署の調査(臨検)は、どのような場合に来るのですか?

A3: 調査には、定期的に対象企業を選ぶ「定期監督」、労働者からの申告に基づく「申告監督」、重大な労働災害が発生した際などに行う「災害時監督」などがあります。特に「申告監督」は、元従業員や現従業員からの情報提供がきっかけとなることが多く、抜き打ちで行われるケースが一般的です。


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