36協定の上限規制を遵守するには、日々の勤怠管理と給与計算の実務を正しく運用することが不可欠です。本記事では、労働時間の正確な把握から、残業申請フローの構築、割増賃金の計算、賃金台帳への記載まで、法律を守るための具体的な5つのステップを解説します。すぐに使える残業申請書のテンプレートもご用意しました。

36協定遵守はここから!勤怠管理と給与計算の5ステップ

法律を遵守した体制構築は、難しいことではありません。以下の5つのステップを着実に実行することが、すべての基本となります。

  1. Step1: 労働時間を1分単位で客観的に把握する

    最初のステップは、従業員の始業・終業時刻を1分単位で、客観的な記録に基づいて把握することです。タイムカード、ICカード、PCのログオン・ログオフ記録などがこれにあたります。自己申告制は、客観的な記録と大きな乖離がないかを確認する場合にのみ認められます。「15分未満は切り捨て」といった運用は違法ですので、絶対に行わないでください。

  2. Step2: 残業の申請・承認フローを明確化する

    残業は「従業員が勝手に行うもの」ではなく、「会社が業務上の必要性を認めて命令するもの」です。そのためには、「事前申請・上長承認」のフローを徹底することが重要です。これにより、不要な残業を抑制し、上長が部下の労働時間を管理する意識を高めることができます。

  3. Step3: 上限規制を意識したアラート体制を構築する

    月末になってから「上限を超えそうだ」と気づいても手遅れです。月の上限時間(45時間)に近づいた従業員やその上長に自動でアラートが通知される仕組みを構築しましょう。勤怠管理システムにはこうした機能が標準搭載されていることが多いですが、Excelで管理している場合でも、条件付き書式などで警告色を表示する工夫が有効です。

    勤怠管理システムのダッシュボード画面。残業時間が上限に近づいている従業員の名前が赤くハイライト表示されている。
  4. Step4: 正しい割増率で残業代を計算する

    把握した時間外労働に対して、法律で定められた割増率で残業代を計算します。計算ミスは未払い残業代の直接的な原因となりますので、正確に行いましょう。

    • 法定時間外労働: 1.25倍以上
    • 法定休日労働: 1.35倍以上
    • 深夜労働(22時~翌5時): 0.25倍以上(時間外や休日と重なれば、その分割増率に加算)
    • 月60時間を超える法定時間外労働: 1.5倍以上

    36協定違反がもたらすリスクについては、こちらの記事も併せてお読みください。

  5. Step5: 賃金台帳に必要事項を正確に記載する

    労働基準法で作成と保存が義務付けられている賃金台帳には、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数などを従業員ごとに正確に記載する必要があります。この記録が、適正な労務管理を行っていることの証明になります。

【書式テンプレート】すぐに使える残業申請書・承認フロー例

Step2で解説した残業申請フローを円滑に運用するための、シンプルな申請書テンプレートをご用意しました。以下の項目を参考に、自社の運用に合わせてカスタマイズしてご活用ください。(※本来はここにダウンロードリンクや記載例の画像を設置します)

  • 申請日・所属・氏名
  • 残業予定日
  • 残業予定時間(XX:XX ~ XX:XX)
  • 残業理由(具体的な業務内容)
  • 承認者(上長)サイン欄

Excel管理はもう限界?勤怠管理システム導入のメリット

ここまでのステップを見て、「Excelでの手作業管理は限界かもしれない」と感じた方もいるかもしれません。勤怠管理システムを導入すると、労働時間の自動集計、残業アラート、法改正への自動対応などが可能になり、管理部門の業務負担を大幅に軽減しながら、コンプライアンス体制を強化することができます。

まとめ

36協定の遵守は、特別なことではなく、日々の正しい実務の積み重ねによって達成されます。「労働時間の客観的な把握」と「残業の事前申請・承認」という基本を徹底し、それをサポートする仕組みを整えることが、労務リスクから会社を守り、従業員が安心して働ける環境づくりの鍵となります。


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