「うちはまだ小さい会社だから、就業規則は必要ない」と考えている経営者の方はいませんか?法律上、常時10人以上の従業員を使用する事業場には就業規則の作成・届出義務がありますが、10人未満でも作成するメリットは絶大です。この記事では、就業規則の重要性と、作成しない場合に潜む深刻な法的リスクについて、専門家がわかりやすく解説します。
就業規則は会社の「ルールブック」であり「お守り」
就業規則とは、労働時間、賃金、休日、服務規律など、職場のルールを明文化したものです。これがなければ、何か問題が起きたときに「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。明確なルールを定めておくことは、無用な労使トラブルを防ぎ、従業員が安心して働ける環境を作るための第一歩。いわば、会社と従業員双方にとっての「お守り」なのです。
従業員10人未満の会社が就業規則を作るべき3つの理由
作成義務がないからといって、作らないでいるのは非常にもったいない選択です。
- トラブルの未然防止: 解雇、懲戒処分、休職など、デリケートな問題が発生した際に、就業規則に根拠規定がなければ会社の正当な対応が困難になります。
- 従業員の帰属意識向上: 会社のルールが明確になることで、従業員は安心して業務に集中でき、会社への信頼感や帰属意識が高まります。
- 助成金の申請要件: 様々な助成金の中には、就業規則に特定の規定があることが申請の要件となっているものが数多くあります。
「就業規則がない」ことの具体的な法的リスク
万が一、従業員との間でトラブルが発生した場合、就業規則がないと会社は非常に不利な立場に置かれます。
ケーススタディ:問題行動を繰り返す社員を解雇したい
ある社員が、度重なる遅刻や業務命令の無視を繰り返しています。会社としては懲戒解雇を検討していますが、就業規則がありません。この場合、どのような懲戒事由に該当するのか、どのような手続きを踏むべきかの根拠がないため、不当解雇として訴えられるリスクが非常に高くなります。
就業規則に懲戒の種類や事由を明記しておくことで、初めて正当な処分が可能になるのです。会社の秩序を守るためにも、ルールブックの整備は不可欠です。社労士へのご相談もぜひご検討ください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 従業員数「10人」には、パートやアルバイトも含まれますか?
A1: はい、含まれます。常時使用する従業員数には、正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員など、雇用形態に関わらず全ての労働者がカウントされます。そのため、「正社員は数名だけど、アルバイトを含めると10人を超える」という場合は作成義務が発生します。
Q2: インターネットで拾ったテンプレートをそのまま使っても良いですか?
A2: テンプレートの安易な使用は非常に危険です。テンプレートはあくまで雛形であり、自社の実態に合わない条項や、最新の法改正に対応していない内容が含まれている可能性があります。会社の実情に合わせてカスタマイズし、専門家のチェックを受けることを強く推奨します。
Q3: 就業規則を作成したら、必ず労働基準監督署に届け出る必要がありますか?
A3: 従業員10人以上の事業場は、作成後に労働者の代表から意見を聴取し、その意見書を添えて所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。10人未満の事業場には届出義務はありませんが、トラブル防止という観点からは、作成した就業規則を従業員に周知徹底することが最も重要です。