働き方改革の選択肢として注目を集める「週休3日制」。大手企業だけでなく、人材確保や生産性向上を目指す中小企業でも導入検討の動きが広がっています。この記事では、週休3日制のメリット・デメリットを整理し、導入時に避けては通れない給与計算や社会保険の取り扱いといった実務的な論点を、社労士の視点から詳しく解説します。自社で導入可能か、現実的に検討できます。
週休3日制の3つの導入パターン
「週休3日制」と一言で言っても、その内容は様々です。まずは自社がどのパターンを目指すのかを明確にしましょう。
- 給与維持型: 1日の労働時間を長くして(例:1日10時間×週4日)、週の総労働時間は変えずに給与も維持するパターン。
- 給与減額型: 週の総労働時間が減るのに伴い、給与も減額するパターン。
- 給与維持・労働時間短縮型: 1日の労働時間はそのままで週の総労働時間を減らし(例:1日8時間×週4日)、給与は維持する最も理想的なパターン。生産性向上が大前提となる。
多くの企業では、まず「給与維持型」から検討するケースが一般的です。
社労士が解説!給与・社会保険はどう変わる?
導入を検討する上で、人事労務担当者が最も気になるのがこの点でしょう。
給与計算の変更点
「給与維持型」で1日の所定労働時間を8時間超に設定する場合、変形労働時間制の導入が必須です。これを導入しないと、8時間を超えた分は全て時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要になってしまいます。また、給与体系によっては基本給や各種手当の見直しも必要です。
社会保険の適用
週の所定労働時間が短くなる「給与減額型」や「労働時間短縮型」を導入する場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入要件に注意が必要です。正社員であっても、週の所定労働時間が20時間未満になると、原則として被保険者資格を喪失します。また、週30時間未満になる場合は、企業の規模によって加入要件が変わるため、個別の確認が求められます。
中小企業が導入するメリット・デメリット
メリット
- 採用競争力の向上: 魅力的な働き方を提示することで、優秀な人材を獲得しやすくなる。
- 従業員の定着率向上: ワークライフバランスが向上し、離職率の低下が期待できる。
- 生産性の向上: 限られた時間で成果を出す意識が高まり、業務効率化が進む。
デメリット
- 勤怠管理の複雑化: 変形労働時間制の導入など、労務管理が煩雑になる。
- コミュニケーション機会の減少: 社員が揃う日が減り、情報共有に工夫が必要になる。
- 顧客対応への影響: 休日が増えることで、取引先との連携に支障が出る可能性がある。
導入を成功させる鍵は、一部の部署で試験的に導入するなど、スモールスタートで課題を洗い出すことです。新しい働き方のご相談はぜひ当事務所へお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 週休3日制を導入する場合、就業規則の変更は必要ですか?
A1: はい、必ず必要です。「休日」「労働時間」「賃金」など、就業規則の根幹に関わる重要な変更となるため、実態に合わせて内容を見直し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
Q2: 全社員一律で導入しなければいけませんか?
A2: いいえ、そんなことはありません。部署ごとや職種ごと、あるいは個々の従業員の希望に応じて選択できる「選択的週休3日制」を導入する企業も増えています。全社一律よりも、柔軟な制度設計の方が従業員の満足度は高くなる傾向があります。
Q3: 増えた休日に、副業・兼業を認めても良いのでしょうか?
A3: 厚生労働省も副業・兼業を推進しており、認める方向で検討するのが望ましいでしょう。ただし、競合他社での就労や、本業に支障をきたすような長時間労働を防ぐためにも、就業規則に副業に関するルール(届出制など)を定めておくことが重要です。

