「残業=悪」ではない。見直すべきは“時間”ではなく“成果”への意識
「残業させるな」という号令だけでは、現場は疲弊します。持ち帰り残業やサービス残業が横行し、かえってエンゲージメントを低下させる結果になりかねません。問題の本質は、残業時間の長さではなく、「その時間が、企業の成長と個人の成長に繋がる価値を生み出しているか」という点にあります。
36協定を守るのは、経営の最低ライン、いわば「守りの労務管理」です。真に成長する企業は、その一歩先、労働時間データを活用して組織のパフォーマンスを最大化する「攻めの労務管理」へと舵を切っています。
エンゲージメントを高める“攻め”の時間管理戦略 3つの柱
では、「攻めの時間管理戦略」とは具体的に何をすべきなのでしょうか。その柱は3つあります。

1. 可視化:労働時間データを経営の意思決定に活かす
勤怠データは、給与計算のためだけにあるのではありません。「どの部署で」「どのプロジェクトに」「どれくらいの工数がかかっているのか」を分析すれば、それは経営判断に役立つ貴重な資源となります。不採算事業からの撤退や、成長分野へのリソース集中配分など、データに基づいた客観的な意思決定が可能になります。
2. 効率化:テクノロジーでノンコア業務を徹底的に削減する
可視化されたデータから、従業員が単純作業や社内調整などのノンコア業務に多くの時間を費やしている実態が見えてくるはずです。RPAやAIなどのテクノロジーを積極的に活用し、従業員が付加価値の高いクリエイティブな仕事に集中できる環境を創出すること。これこそが、攻めの時間管理における「効率化」です。
3. 評価:時間ではなく創出した価値で評価する制度へ
「長く会社にいる社員が頑張っている」という古い価値観を捨て、労働時間の長短ではなく、創出した成果(アウトプット)で正当に評価する人事評価制度へと刷新することが不可欠です。これにより、従業員はダラダラと残業するのではなく、限られた時間でいかに高いパフォーマンスを出すかを自律的に考えるようになります。これがエンゲージメントの源泉です。
勤怠管理DXの成功事例は、こちらの記事でより詳しく解説しています。
人的資本経営の時代、経営者が今すぐ下すべき決断
現代は、従業員を「コスト」ではなく、価値創造の源泉となる「資本」と捉える「人的資本経営」の時代です。従業員の時間という最も貴重な資本を、何に投資するのか。その意思決定こそが、経営者の最重要任務です。
勤怠管理への投資は、単なるコンプライアンス対応費用ではありません。それは、従業員のエンゲージメントと生産性を引き出し、企業の持続的な成長を実現するための、最も効果的な戦略的投資なのです。古い価値観から脱却し、攻めの時間管理戦略へと踏み出す決断を、今こそ下すべき時です。
まとめ
労働時間管理を「守り」から「攻め」の経営課題へと転換しましょう。労働時間を正確に「可視化」し、テクノロジーで業務を「効率化」、そして成果に基づく「評価」を行う。この3つの柱を実践することで、従業員エンゲージメントは高まり、組織は活性化し、企業は新たな成長ステージへと進むことができるのです。