【第3回】実践編①:労働保険の成立手続きをステップ・バイ・ステップで完全解説!
公開日: 2025年6月19日
はじめに:いざ、行政窓口へ!
シリーズ第1回、第2回を通して、あなたは保険制度の全体像を理解し、手続きに必要な情報も全て手元に揃えました。完璧な準備を終えた今、いよいよ実際に行政の窓口へと向かう「実践編」のスタートです。
手続きは大きく分けて**「労働保険」**と**「社会保険」**の2系統に分かれます。今回は、まず「労働保険」の手続きに焦点を当て、ステップ・バイ・ステップで徹底的に解説します。
今回のゴール
この記事を読み終える頃には、あなたは「労働保険関係成立届」という最重要書類を自信を持って作成し、労働基準監督署とハローワークへの提出を完了できるようになります。
労働保険手続きの全体像:2つの役所を順番に攻略する
労働保険の手続きは、2つの異なる役所を順番に訪れるリレー形式で進めます。この流れを頭に入れておくだけで、混乱することなくスムーズに進められます。
労働基準監督署
まず最初に訪れる場所。「会社の保険関係」を成立させます。
ハローワーク
次に訪れる場所。「従業員の保険加入」手続きを行います。
重要なのは、必ず「労働基準監督署」から先に行くことです。なぜなら、ハローワークでの手続きには、労働基準監督署で受け取る「受付印が押された書類の控え」が必須だからです。
【ステップ1】労働基準監督署:「労働保険関係成立届」の提出
最初の目的地は、あなたの会社の所在地を管轄する労働基準監督署です。ここで、会社が国との間に労働保険の契約を結んだことを証明する「労働保険関係成立届」を提出します。
- 提出期限:従業員を雇用した日の翌日から10日以内
- 主な持ち物:法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、事業所の賃貸契約書のコピーなど
【体験ツール】労働保険関係成立届の記入をシミュレーション!
実際の書類は項目が多くて戸惑うかもしれません。ここで主要な項目を仮想的に入力し、どのように書類が出来上がるか体験してみましょう。
【シミュレーション結果】労働保険関係成立届(抜粋)
ポイント解説:保険料の申告
実際には、この成立届と同時に「概算保険料申告書」も提出します。これは、年度末までに支払う従業員の給与総額の見込みを計算し、それに基づいて前払いの保険料を申告・納付する書類です。初めてで計算が難しい場合は、窓口の担当者に相談しながら作成するのが最も確実です。
【ステップ2】ハローワーク:雇用保険の手続き
労働基準監督署で「労働保険関係成立届」の控えを受け取ったら、次はその控えを持って、会社の所在地を管轄するハローワークに向かいます。
ここでは、2つの重要な手続きを同時に行います。
- 雇用保険適用事業所設置届の提出:あなたの会社を「雇用保険に入れる事業所」として登録します。(提出期限:設置の日の翌日から10日以内)
- 雇用保険被保険者資格取得届の提出:採用した従業員個人を「雇用保険の加入者」として登録します。(提出期限:加入した月の翌月10日まで)
ハローワーク手続きの重要ポイント
ハローワークでの手続きには、前のステップで受け取った「労働基準監督署の受付印が押された成立届の控え」が絶対に必要です。これがないと手続きができませんので、絶対に忘れないようにしましょう。
その他、労働者名簿や賃金台帳、出勤簿(タイムカード)など、雇用の実態がわかる書類の提示を求められることがあります。第2回で準備した書類一式を持参すると安心です。
まとめと次回予告
お疲れ様でした!労働基準監督署とハローワークでの手続きを終え、これであなたの会社は正式に「労働保険」の適用事業所となりました。従業員は安心して業務に従事でき、万が一の際にも国のセーフティネットで守られることになります。
しかし、手続きはまだ半分です。もう一つの大きな柱である「社会保険」の手続きが残っています。そして、そちらにはさらに厳しいタイムリミットが待ち構えています。