【第1回】社長、その採用大丈夫?従業員1人目の雇用で絶対に必要な保険手続きの全体像
公開日: 2025年6月19日
はじめに:従業員1人目の採用が会社にもたらす「責任」と「信頼」
事業を立ち上げ、初めて従業員を1人採用するという決断は、単に労働力を確保するという以上の意味を持ちます。それは、個人事業主や一人の会社が、社会的な存在へと移行する重大な転換点です。
この瞬間から、経営者は従業員の生活の一部を支えるという「責任」を負い、その責任を果たすことで従業員からの「信頼」を築いていくことになります。
ポイント
この責任と信頼の礎となるのが、社会保険および労働保険への適切な加入手続きです。煩雑に感じられるかもしれませんが、これらの手続きを法に則り、迅速かつ正確に行うことは、会社が従業員に対して示す最初の、そして最も具体的な「誠意」の表明なのです。
本シリーズでは、初めて従業員を雇用する経営者が、この重要な第一歩を確実に踏み出すための完全なロードマップを提供します。
2つの大きな柱:「労働保険」と「社会保険」
従業員を雇用する際に経営者が直面する公的保険制度は、大きく分けて「労働保険」と「社会保険」の2つの柱から成り立っています。まずはその全体像を正確に把握することが不可欠です。
1. 労働保険(労災保険・雇用保険)
目的:主に「労働」に関連するリスクを保障するための制度です。
構成:
- 労災保険:業務中や通勤途中の事故による怪我や病気などを補償します。従業員を1人でも雇えば加入は絶対的な義務です。
- 雇用保険:労働者が失業した場合や、育児・介護などで休業する際に給付を行います。
2. 社会保険(健康保険・厚生年金保険)
目的:労働に直接起因しない、より広範な生活上のリスクに備えるための制度です。
構成:
- 健康保険:業務外での病気や怪我の際に、医療費の負担を軽減します(例:病院窓口での負担が3割に)。
- 厚生年金保険:将来の老齢年金や、万一の際の障害年金・遺族年金などの給付を行います。
これら2つの制度は、手続きを行う役所(管轄官庁)が異なります。そのため、私たちは2つの異なる行政機関に対して、それぞれ手続きを行う必要があります。この点は今後の記事で詳しく解説します。
【30秒で診断】あなたの会社は社会保険に加入する義務がある?
労働保険は従業員を1人でも雇えば加入義務がありますが、社会保険は事業所の状況によって「強制加入」か「任意加入」かが決まります。あなたの会社がどちらに該当するか、ここでチェックしてみましょう!
※一般的なサービス業やIT企業は「法定16業種」に含まれることが多いです。ご不明な場合は専門家にご相談ください。
今回のまとめと次回予告
今回は、従業員を雇用する際の2大保険制度「労働保険」と「社会保険」の概要、そしてあなたの会社が社会保険に加入する義務があるかどうかを診断しました。
診断結果が【強制適用事業所】となった方へ
法律上の義務として、社会保険への加入手続きが必須です。特に、手続きには「事実発生から5日以内」という非常に厳しい期限が設けられています。
診断結果が【任意適用事業所】となった方へ
法律上の加入義務はありませんが、従業員の半数以上の同意があれば任意で加入できます。社会保険を完備することは、従業員の安心につながり、採用活動でも大きなアピールポイントになります。ぜひ前向きにご検討ください。
さて、次回はいよいよ実際の手続きに向けた準備に入ります。